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あいち・なごやニュース ユースの視点

ESDユネスコ世界会議が名古屋で始まる

開会あいさつをするイリナ・ボコバ ユネスコ事務局長

日本が「ユネスコ/日本ESD賞」新設を発表

環境や貧困など地球規模の課題の解決に向け、行動する人々を育成する「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」が10日、愛知県名古屋市の名古屋国際会議場で開幕した。

ユネスコ加盟国の政府代表やNGO関係者ら約100カ国・地域から約1000人が参加。3日間の日程で4つの全体会合や34のワークショップ、25のサイドイベントなどを開き、ユネスコが主導してきた「国連ESDの10年」(2005~14年)の成果を検証する。最終日の12日には、今後の取り組み方針をまとめた「あいち・なごや宣言」が発表される。

開会あいさつをする皇太子殿下

開会式は、皇太子ご夫妻が出席するなか、狂言師の野村萬斎さんが「三番叟」を披露して始まった。次いで、ユネスコのイリナ・ボコバ事務局長が「地球は大きな圧力にさらされています。今こそ行動が求められています」とあいさつ。技術や政策だけでは持続可能な開発は達成できないとして、新しいスキルや価値観を身につけるための教育の必要性を強調した。

皇太子さまは「若い人たちが持続可能な開発の将来の担い手になるべきです」と英語であいさつし、「素晴らしい議論がなされることを期待しています」と述べた。

下村博文文部科学相は「日本政府は教育振興基本計画で推進を明記するなど様々な取り組みをしてきました。新たなスタートをきるつもりで、ESDに一層取り組んでいきます」と述べ、世界中の優れたESDの取り組みに贈る「ユネスコ/日本ESD賞」(仮称)の新設を発表した。

狂言を披露する野村萬斎さん

文科省によると、同賞は、今年で「国連ESDの10年」が終わり、来年からユネスコの公式プログラムとして「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム」が始まるのに合わせて新設した。来年から5年間に毎年3件の活動を表彰する予定という。担当者は「ESDの取り組みをさらに強化していくため、日本としても様々な形で世界に貢献していきたい」と話した。

開会式では、開催県の大村秀章愛知県知事があいさつしたほか、潘基文国連事務総長とアヒム・シュタイナー国連環境事務局長のビデオメッセージが映し出された。

その後、基調演説に立ったララ・ハスナ・モロッコ王女が「ESDの取り組みは単なる掛け声で終わってはいけません。一人ひとりがそれぞれの手段と立場で小さなことから行動していかなければならない」と訴えた。(伊藤亜衣)

10年間の成果を振り返る

最終レポートを報告するチエン・タン・ユネスコ教育担当事務局長補

ユース代表、世代間の協力を訴える

10日に開幕したユネスコ世界会議では、開会式に続き、これまでの取り組みを検証する「国連ESDの10年の成果を振り返って」が開かれた。チエン・タン・ユネスコ教育担当事務局長長補が、取り組みの成果を10項目にわたってまとめた最終レポートを発表し、ESDの実践活動に取り組んできた4人が課題について話し合った。

最終レポートは、多くの国で、環境や持続可能な開発をめぐる問題について、市民の意識が改善されてきたこと▽初等・中等教育のカリキュラムにESDが組み込まれるようになってきたこと▽教育分野と持続可能な開発の政策との間でネットワークが構築されるようになってきたことなどを報告。タン氏は「この10年間で明らかな進歩があった」と成果を強調したうえで、「今後は、ESDのより一層の拡大のために、リーダーシップを発揮できる人材を養成することが重要です」と話した。

パネルディスカッションで発言する南アフリカのアンジェリーナ・モッシェンガ教育大臣

その後のパネルディスカッションでは、イリナ・ボコバ・ユネスコ事務局長が、この10年間でESDと教師団体との協力など「パートナーシップの構築」が進んだと指摘。「持続可能な開発という名のもと、点と点がつながって線になってきました」と語った。

和楽器とのコラボで演奏するバイオリン奏者の川井郁子さん

また、バーレーンから参加したユース代表のタリック・アル・オライミーさん(26)は、今月初めに岡山市であった18~35歳の若者たちによる「ユースカンファレンス」に参加した経験から、世代間の対話の重要性について発言した。このカンファレンスでは各国の政府代表団との接触があまりなかったとして、「世代間の平等なパートナーシップが必要です」と述べ、「若者の意思を反映させた政策をつくるために、もっと世代間の協力が必要です」と訴えた。

これに対して、南アフリカのアンジェリーナ・モッシェンガ教育大臣は、「世代間のギャップを埋めるためには、若者が発するメッセージを強化し、それを国内に伝えて行くことが必要です」と述べた。(村上友里)

国連ESDの10年後に向けて

今後10年の課題について発表するバングラデシュのヌルル・イスラム・ナヒド教育大臣

高校生への教育、メディアを通した活動の重要性を指摘

10日に開幕したユネスコ世界会議では、今後10年間の取り組みを考える「国連ESDの10年後に向けて」が開かれ、4カ国の教育大臣がそれぞれ意見発表した。

 オマーンのマディハ・アル・シバニ教育大臣は「若者を教育するためには、教育するスキルが重要です。そのためにも新しい世代の教育者を生みだすことが必要です」と述べ、教育の重要性を強調した。今後の発展のためには、初等・中等・高等教育のすべてが大切だとして、今月初めに岡山市で開かれた高校生と教員による活動「ユネスコスクール」のプログラムが、これから各国で力を入れるべき取り組みの一つになると述べた。

「バングラデッシュの教育は大きく変わりました」。これまでの成果を満足そうな表情で語ったのは、同国のヌルル・イスラム・ナヒド教育大臣だ。国内の学校では男女の比率がほとんど変わらなくなったうえ、義務教育の教科書を無料にすることで、中退率が減ったという。「ESDについては、学校内だけでなく、学校外でも学べるようにしたい」。これからも若者たちの意識を高めていくために、メディアを通した活動にも期待したいと訴えた。

各国からの代表団を案内するボランティアに参加している秋田国際教養大学4年の西尾加奈さん(22)はスピーチを聞き、「国際化した社会では、自分だけのことを考えるのではなく、各国が協力することが重要だと思いました」と話した。そのうえで、「考えるときは世界全体のことを考えるけれども、行動するときは地域ごとに行動しなければならない。ESDはまだまだ社会に浸透していないので、これを機に伝えていきたい」と感想を語った。(益川量平)

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